HOME > ギャラリー > ギャラリー一覧 > ギャラリー詳細

ギャラリー詳細

「画像からくり」  第5回 ジオラマの組立キット付きの本 ― ダゲールの心情を想って   桑山哲郎 氏

 

Fig.2組立後のミニチュア・ジオラマ劇場で見える光景

 今回の画像からくりは「ミニチュア・ジオラマ劇場」の組立キットである.「パノラミック・スコープ・アート イタリアの一日」(こどもくらぶ:編,(株)今人舎 2009 年 7 月刊)という単行本には,前後・左右 18 cm,厚さ 5 cmのミニチュア・ジオラマ劇場が付録に付いている.
 Fig.1 はこの本の表紙, Fig.2 はミニチュア・ジオラマ劇場のしかけであるパノラミック・スコープを覗き込んで観賞している様子と,照明を切り替えると見えてくるジオラマの二つの風景である.ミニチュア・ジオラマ劇場を組立てるのは比較的容易であるが,表示像の撮影が意外に難しいので,Fig.2 には裏表紙の帯を使用させていただいた.
 銀板写真(ダゲレオタイプ)の発明者であるルイ・ジャック・マンデ・ダゲール(1787 年〜1851 年)は,ジオラマ劇場の経営者であり,ジオラマに用いる背景画を人手を介さず描きたいという動機から,写真の研究に取り組んだことで知られている.ジオラマ劇場では,薄い紙の表面に描いた絵を手前から照明し,反射像で昼の風景を表示する.また暗い場面で,明るく表示する図柄の部分だけ,裏打ちに用いている厚紙に穴を開けておく.そして,手前からの照明光量を減らすのと同期し背後からの照明光を強めていくことで,月や星,街の明かりが明るく光り,夕方から夜中に至る風景の変化を表示する.
 ダゲールのジオラマ劇場は,銀板写真を発表後に火災が発生し,再開されることは無かったとされている.18世紀に発明されたパノラマ劇場に改良を加えたジオラマ劇場であるが,ステレオ写真が大量に販売されるようになると「ティッシュ・フォト」という商品が登場する.これはステレオ写真カードを反射と透過の照明を切り替えて観賞する構造であった.
 Fig.2 の左端で,向かって左は反射照明光の量を調節する板,右は反射照明の光量を調節し,夕焼けの赤い色の照明を作り出す反射板である.これらの構造は立体鏡(ステレオスコープ)から受け継がれている.
 ジオラマ劇場を覗き込みながら,昼間から夕焼け,そして夜になる風景の移り変わりを楽しみ,さらに銀板写真の研究に打ち込んだダゲールの心情を想うのも一興ではないだろうか.
著者:桑山哲郎

前へ