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ギャラリー詳細

「画像からくり」第9回 鏡仕掛けの立方体 ― 3-D万華鏡と貯金箱 桑山哲郎 氏

 

Fig.1 サイコロ形万華鏡“CUMOS”(キューモス)ヤマザキミノリ 作

Fig. 1は,“CUMOS”(キューモス)という名前のサイコロ形の万華鏡である.印刷物を目にしている皆様には,その魅力をお伝えするのが困難なことを覚悟の上で,その魅力についてご紹介したい.通常の万華鏡で作り出される幾何学図形は,平面上に広がる.まれには多面体の表面を形作る.ところが今回のこのサイコロ形万華鏡では,目のすぐ前(ピント調節が出来ない程!)から,見分けが付きにくくなるほど遠方まで,広大な3次元空間を作り出す.この立方体は,白色のアクリル板で作られていて,内側の面が表面鏡になっている.表面に開けた穴から覗いて観賞するのだが,万華鏡の中に光を導くため,穴に対向する面に幾何学模様のスリットを刻んでいる.スリットを通り入射した光は,前後,上下,左右の平面鏡の「合わせ鏡」で繰り返し反射され,3 次元の広がりを持った像を作り出す.
この万華鏡の像で圧倒されるのが,奥行き方向の広がりである.この「キューモス」の寸法は一辺が50mm 程であるが,前後方向の繰り返し反射で,50 mm,150 mm.250 mm,350 mm……と,一辺の長さの奇数倍の距離の各面に,上下左右に無限に広がった像が作り出される.手の平よりも小さな箱の中に,無限の宇宙が存在しているようである.まるで,鏡で囲まれた空間に迷い込んでしまったような感覚さえ覚える.3D映像の中でも,目の焦点調節が主役の映像として大変ユニークな存在である.
私はこの万華鏡の作家である ヤマザキミノリ 氏に1975年に出会い,作品をいただいた.“CUMOS”(キューモス)は,“箱の中の宇宙”という意味でCUBIC COSMOSからきているとのことである.ヤマザキ氏は,当時東京芸術大学に在学中だったが,造形作家としてその後活躍され,現在は女子美術大学の教授となっている.「キューモス」が作り出す3D 映像を観賞するには,実物を覗き込むしかないが,写真を撮影することにも問題がある.普通のカメラは,箱の外に置くしかないので,目で見たようには撮影ができないのである.ヤマザキ氏は,この「キューモス」の像を撮影する装置も同時に考え出している.覗き穴にピンホールを配置し,手前をピンホールカメラの暗箱とすることで,深い焦点深度を持ち,広い撮影画角でディストーションの無い像を撮影することを実現した.ヤマザキ氏の撮影した作品は,多数webサイトで公開されているので,ぜひアクセスしていただき,3D 映像をご想像いただきたい.
【http://cumos.jp/ 及び http://www.fantacl.com/index.html】
その後「キューモス」は,坂根厳夫 氏が朝日新聞日曜版に連載した「新・遊びの博物誌」に取り上げられ 1),また全国巡回の展覧会「遊びの博物館 パートII」2)(1984 年)で大型の作品が展示されるなど,知名度がかなり高まったと思う.
ところが30 年近く経つと,万華鏡ブームでサイコロ形万華鏡にも注目が集ま中,愛好家の間で原作者探しが始まり,ヤマザキ氏が「再発見」されたというエピソードまで伝えられている 3).ぜひ多くの方に知っていただきたいものである.
著者:桑山哲郎 氏

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