HOME > ギャラリー > ギャラリー一覧 > ギャラリー詳細

ギャラリー詳細

「画像からくり」第25回 奥行き反転錯視物体を手作りする

 

Fig.1立方体形の錯視物体

 Fig.1は,プリンターを用い少し厚い紙にプリント,組み立てた錯視物体である.どちらも立方体に見えることと思う.写真は不安定な印象があり,誌面を面内で180度回転して見た方がより自然な印象になる.これら錯視物体は,実際には中央部が凹んだ形をしている.照明がうますぎると,実在感が薄れてしまうのでわざと影が出るようにしている.作り方と種明かしは後に示す.平面図形でありながら,(片方の目で)ある時間見続けると,凹凸が交互に反転し見える錯視現象は,1832年鉱物学者ネッカーが「ネッカーキューブ」として報告しているのが最初とされている.一方,立体物による錯視の報告は,1887年の「マッハの本」から始まる.物理学者・科学哲学者として著名なエルンスト・マッハ(1838–1916)は,白い長方形の紙1枚を用いた錯視現象を報告している.いま,「Λ」の形に折り曲げた紙を机の上に立て,片方の目でじっと見続ける.すると紙の形が「V」の形に見えることがある.このとき,実際には奥にある紙の「折り目」が,手前あるように感じられる錯視が生じている.本を立てて置いた状態と伏せた状態が入れ替わることから「マッハの本」と呼ばれる.このとき,(1)形の変形が生じる.元々は長方形の形の面が台形,あるいは不等辺の4 角形に知覚されまた逆の現象も生じる.(2)物体表面の色が変わる.2つの面が共に白色という認識から,一方は白色,他方は灰色の面に見えてくる.(3)体験者が見る位置を左右に変えると,物体が首を振り,動くように見える.という一連の現象が起こってくる.
 2つに折った紙から立方体への発展がいつの時点かは明らかではないが,少なくとも筆者が1978年に入手した工作教材の本1)には,十分に教材としてこなれた形で,奥行きが反転する立方体の展開図が掲載されている.その後も,1994年に発行されたしかけ絵本2),2000年に刊行された錯視図形を納めた本3),絵本作家による遊び心があふれた本4)など,奥行きが反転する錯視物体の型紙を納めた本は続々と刊行されている.なお奥行きが反転する錯視では,1m以下の距離から観察しているときには,両目を開いた途端に錯視の状態が壊れてしまい,中央が凹んだ物体に戻ってしまうのを体験することができる.また,日常見慣れた物体の方が簡単に錯視を生じ,手前に飛び出し見えやすい性質がある.Fig.1の右の物体4)は,ルービック・キューブの赤・緑・黄色に塗り分けられていて,すぐに錯視を体験することができる.
著者:桑山哲郎 氏

次へ